第6回目【ストレスの歴史④一般適応症候群(セリエ)】

やまもと
こんにちは。紫竹カウンセリングオフィスのカウンセラー山本春香です。いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
このブログでは、主に「こころと体の健康」をテーマに、日々の生活の中で役立つトピックスをお伝えできればと思っています。ときどき、ちょっと難しい専門的な内容もありますが、ブログに登場する猫たちと一緒にお付き合いいただければと思います。
第5回目は、ストレスの原因であるストレッサーに焦点を当て、セリエが提唱したストレッサーの種類についてお話ししました。第6回目は、セリエが提唱したストレスの理論について詳しく解説していきたいと思います。

ずいぶん「ストレス」について知識が増えてきたね。今日はどんなことを学ぶのかな?
セリエのストレス理論
1976年、カナダの生理学者セリエ(H. Selye)は一般適応症候群を提唱しました。「症候群」という名称ですが、病名のことではありません。生体がストレッサーを受けたとき、これらの刺激に適応しようとして生体に一定の反応が起こることを指しています。つまり、ストレッサーに対する自然な体の反応で、誰しも起こるものです。

やまもと
私たちはストレッサーに直面すると、何とか対処しようと頑張ります。しかし、その分エネルギーが必要になり、体力や気力をいつも以上に消費しています。そして、人によっては頭痛がしたり、お腹が痛くなったりすることがありますよね。ストレスはこのような体の反応や不調を引き起こすことがありますが、体のどの部分に現れやすいかは個人差があります。ちなみに私は、体が熱くなったり、目の奥に力が入って痛くなりやすいです。
一般適応症候群の症状
セリエが提唱した一般適応症候群の症状は、誰にでも共通する体全体の変化のことを指しています。それが以下の3つになります。
①副腎皮質の肥大
ストレッサーが大きく、長期化すると、副腎皮質からコルチゾールが分泌し続け、副腎皮質が大きくなっていきます。
②胸腺・リンパ節・脾臓の萎縮
コルチゾールが長期間分泌することでリンパ球細胞を破壊し、リンパ球を作りだす胸腺・リンパ節・脾臓を萎縮させます。リンパ球とは白血球の一種で、生体の防御や免疫機能を担っています。
③胃・十二指腸の出血と潰瘍化
胃腸への血流が抑制され、胃や十二指腸の粘膜の血流が減少し、酸によって溶かされやすくなり、出血や潰瘍が生じます。例)ストレスで胃潰瘍になる
これらの症状は、人によってストレスの状況が異なっていたとしても、体ではみな同じような反応が生じるとしています。つまり、川に落ちても、熊に出くわしても、銃をもった人をみかけても、体全体はみな同じように反応するのです。この理論では人の生理的な反応に焦点を当てているため、セリエが生理学者であることが強く反映されていますね。
続いて、一般適応症候群の経過を見ていきたいと思います。セリエは、人がストレッサーに直面した際、時間経過とともに体の反応が変化していくことを提唱しています。大きく分けると、警告反応期、抵抗期、疲はい期の3つになります。まずは、以下の図を見てみましょう。

横軸は時間、縦軸はその人が持っているストレスに対する抵抗力を表しています。正常な抵抗力とは、普段どおりの日常生活を送ることができる状態をイメージしてみてください。
ワンポイント解説💡
この図で注意したいことは、全ての人がこのような時間経過を辿るわけではなく個人差があるということです。年齢、障害や持病の有無、体調、ストレスに対する脆弱性などによって、①~③の長さが異なってきます。特に、子ども、高齢者、妊婦、障害のある人などは、もともとの抵抗力が低いため、疲はい期に移行するまでの期間が短いとされています。そのため、長期にわたるストレッサーやインパクトの大きいストレッサーが生じた際には、初期段階から注意が必要な方たちと言えるでしょう。
一般適応症候群の3つの時期
それでは、①~③の各時期を詳しく解説していきたいと思います。
①警告反応期
ストレッサーに対する警報を発し、ストレスに耐えるための内部環境を急速に準備する緊急反応が出る時期です。
【ショック相】ストレッサーのショックを受け、外部環境への適応ができていない状態です。生じたストレス状況が現実のものと思えず茫然としており、頭が働かない、感情を失ったように感じる、どうしたらよいかわからない、といった状態です。体では、体温下降、低血圧、低血糖、副腎皮質の萎縮などのショック症状が見られ、一時的に危機的状態に陥ります。例えるならば、雪山で遭難したときのような体の状態になっています。このような危機的状態は生命維持に大きく影響を与えるため、数分〜1日程度で次の反ショック相に移行します。
【反ショック相】副腎皮質からストレスホルモンのコルチゾールが分泌され、ストレッサーに適応するための反応が本格的に発動します。ストレス状況に適応しようと、体温・血圧・血糖値の上昇、副腎皮質の肥大、胸腺・リンパ節の萎縮など一般適応症候群の症状が出現します。ストレッサーから体を守るため、頑張ってストレスに対処しようとしている状態です。自律神経では交感神経が優位の過覚醒モードになっているため、頑張ろうと意欲が高まる反面、些細なことでイライラする、ミスや事故が増えやすい時期でもあります。
②抵抗期
ストレッサーへの適応反応が完成し、持続的なストレッサーとストレッサーに対する抵抗力が拮抗し、安定している時期です。ここで、抵抗期の抵抗力が、正常な抵抗力よりも高い水準にあることに注目してみてください。普段よりも高い抵抗力を維持するためには、長期的に高いエネルギーが必要となるのです。
抵抗期にストレッサーが軽減・消失すると、正常な抵抗力の水準に戻り、疲はい期に移行することはありません。しかし、ストレッサーが持続する場合、いずれ心身ともにエネルギーが枯渇していきます。そして、次の疲はい期に突入するのです。
③疲はい期
心身ともに疲弊し、長期間持続するストレッサーに抵抗することができなくなり、段階的にストレッサーに対する抵抗力が衰える時期です。体では、体温・血圧・血糖値・心拍の低下が生じ、体重減少、副腎の萎縮、胃潰瘍の併発などが見られます。疲弊状態が長期にわたって継続し、ストレッサーが弱まることがなければ、さらに衰弱していきます。
最悪の場合、死に至ることもありえる非常に危険な時期です。突然死(虚血性心疾患、脳血管障害、大動脈瘤破裂など)、過労死、自殺、災害関連死(心臓病、脳血管障害、肺炎など)などが起こりやすくなります。

やまもと
第6回目は、セリエのストレス理論である一般適応症候群を図を用いて説明しました。いかがだったでしょうか。人生の中で疲はい期を経験することは少ないかもしれませんが、実は誰しもが経験する可能性があります。それは、自然災害がいつどこで起こるかがわからないからです。
そこで、第7回目は「自然災害における一般適応症候群」についてお話しする予定です。大地震を例に、一般適応症候群の経過を具体的にイメージしながら検討し、自然災害特有のストレスについても触れたいと思います。

今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。ブログの内容に関する質問・感想、取り扱ってほしいテーマなどは、お問い合わせフォームよりお願いしますにゃ!
おまけ:ストレッサーに抵抗するには、休息が何より大切です。こころや体が疲れたときは刺激を避けて、少しでも休むよう心掛けてみてくださいね。目を閉じたり、耳栓をして外部からの刺激を少なくすることも有効ですよ。

消耗する前に充電するにゃ!
