第8回目【ストレスの歴史⑤心理学的ストレスモデル(ラザルス&フォルクマン)】

カウンセラー
やまもと

こんにちは。紫竹カウンセリングオフィスのカウンセラー山本春香です。いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。

このブログでは、主に「こころと体の健康」をテーマに、日々の生活の中で役立つトピックスをお伝えできればと思っています。ときどき、ちょっと難しい専門的な内容もありますが、ブログに登場する猫たちと一緒にお付き合いいただければと思います。

第7回目は、セリエが提唱した一般適応症候群の経過について、自然災害を例に解説しました。第8回目は、ストレスの歴史に戻ってお話ししていきたいと思います。なお、今回がストレスの歴史の最終回になります!

ストレスの歴史の最終回は、どのような内容だろう?最後まで一緒に学んでいこうね。

ラザルスのストレス理論

1966年、アメリカの心理学者ラザルス(Lazarus, R. S.)が心理的ストレスを提唱しました。その中でラザルスは、「ストレスとは、個人の資源を超え、心身の健康を脅かすものとして評価された人間と環境とのある特定の関係」と定義しました。

つまり、ストレスは人と環境の兼ね合いによって生まれるということです。ラザルスは、その兼ね合いは個人の物事の評価によって生じると主張しています。同じ状況を経験しても、ストレスを感じる度合いや、表れる心身の症状が異なることはよくあると思います。この個人差には、本人がどのように状況を捉えているかということが大きくかかわっているということです。

ワンポイント解説💡

1914年、生理学者のキャノンが「ストレス」という用語を生理学や医学の分野で初めて使用しました。それから50年以上のち、ラザルスという心理学者が登場し、心理的なストレスの研究が隆盛期を迎えました。

1960年代の日本を振り返ると、高度経済成長の最盛期で、生活習慣が大きく変化しました。具体的には、家電製品の普及、電車の整備、インスタント食品の開発などで、現在の私たちの生活では当たり前になっている多くのモノが作られました。それに伴ってストレスの種類も変化・多様化し、心理的なストレスの研究が多く行われました

現在もこの流れは続いていて、心理的なストレスは個人や社会にかかわらず増大している時代にあるようです。インターネットやSNSが身近になったことで情報社会が強調され、新たな心理的ストレスを感じることもありますね。

ラザルスとフォルクマンのストレス理論

1984年、ラザルス(Lazarus, R. S.)とアメリカの心理学者フォルクマン(Folkman, S)が心理学的ストレスモデルを提唱しました。

このストレス理論では、ストレスは個人と環境との能動的な相互作用として捉えています。この能動的な相互作用には、ストレスの原因であるストレッサーをどのように捉えるかという認知的評価と、ストレッサーへの対処法であるストレス・コーピングの2つが関与しています。そして、ストレッサーに対する認知的評価とストレス・コーピングがストレス反応に影響を与えるとしています。

心理学的ストレスモデルのフローチャート

ここからは、心理学的ストレスモデルをフローチャートで見ながら、詳しく説明をしていきたいと思います。心理学的ストレスモデルを元に、私が作成したものになります。

まず、ストレッサーに直面すると、自分にとって「ストレスフル」「無関係」「無害-肯定的」の3種類に区別して評価が行われます。もしストレッサーを自分にとって「ストレスフル」と評価をした場合、何らかの急性ストレス反応が生じます。不安や怒りなどの感情や、頭痛や腹痛などの身体症状で、誰にでも生じる自然な反応です。

このような急性ストレス反応は人にとって不快であることが多いため、ストレッサーをできる限り小さくする試みを行います。このような行動をストレス・コーピングといい、ストレッサーから距離を置く、気分転換を行う、人に相談をする、などがあります。ストレス・コーピングが適切に機能してストレッサーが小さくなれば、急性ストレス反応は消失し、状況に適応することができるようになります。一方、ストレス・コーピングが上手く機能しなかった場合、急性ストレス反応が慢性化して慢性ストレス反応へと移行します。

心理学的ストレスモデルの専門用語の説明

認知的評価

ストレッサーをどのように捉えるかという個人の受け止め方や感じ方のことです。

「無関係」「無害-肯定的」と評価した場合➡ストレス反応は生じず、状況に適応する
「ストレスフル」と評価した場合➡状況に適応することが難しく、急性ストレス反応が生じる

例)朝の満員電車で子どもが泣いている
「無関係」:自分はイヤホンをして音楽を聴いている。好きな音楽に集中しているので、子どもの泣き声は気にならず無関心。
「無害-肯定的」:泣いている子どもが自分に物理的な害を与えているわけではないし、満員電車の中で泣いている子どもをあやしているお母さんって大変で、頑張ってるなぁと感心。
「ストレスフル」:満員電車で苦しい上に、子どもの泣き声がうるさくて耐えられない。

このように、状況をどのように評価するかによって、急性ストレス反応が生じるかどうかが決まるのです。

急性ストレス反応

精神症状と身体症状があり、ストレッサーに直面してから4週間以内に症状が始まり、2日~4週間以内に消失します。

・精神症状:不安、過敏、緊張、落ち着きのなさ、イライラ、集中力の低下など。
・身体症状:動悸、呼吸困難、めまい、首や肩のこり、震え、不眠など。

慢性ストレス反応

急性ストレス反応から4週間を超えても症状が消失せず、重症・慢性化した状態です。

・精神症状:抑うつ気分、思考力の低下、意欲の低下など。
・身体症状:睡眠障害、食欲低下・増加、疲れやすい、体の痛み、胃腸症状、発汗、息苦しさなど。

カウンセラー
やまもと

ストレスの歴史を8回にわたってお話ししてきましたが、今回ようやく心理学者が登場しましたね!このようにストレス研究の歴史をたどると、体とこころの関連が非常によく理解できると思います。さて、今回でストレスの歴史はお終いです。ここまで読んでいいただいた方、お疲れさまでした。ストレスの捉え方が少しでも広がったようであれば、何よりです。

私たちは、ストレスと無縁ではいられません。そのため、ストレッサーをゼロにすることはできませんが、ストレッサーに適切に対処することでストレス反応を軽減することはできます。そこで、第9回目は心理学的ストレスモデルでも重要視されている「ストレス・コーピング」についてお話しする予定です

今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。ブログの内容に関する質問・感想、取り扱ってほしいテーマなどは、お問い合わせフォームよりお願いしますにゃ!

おまけ:猫同士の挨拶は、鼻同士をくっつけて敵意がないことを相手に伝えるよ。ストレッサーも全てが否定なものではなく、ときに自分を成長させてくれるキッカケになるね。ストレッサーに直面したら、怖がりすぎず挨拶するような感覚で対応してみると、新しい側面が見えるかもしれないよ。