第9回目【ストレス・コーピング①定義と分類】

カウンセラー
やまもと

こんにちは。紫竹カウンセリングオフィスのカウンセラー山本春香です。いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。2025年も引き続きブログを書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

このブログでは、主に「こころと体の健康」をテーマに、日々の生活の中で役立つトピックスをお伝えできればと思っています。ときどき、ちょっと難しい専門的な内容もありますが、ブログに登場する猫たちと一緒にお付き合いいただければと思います。

第8回目は、ラザルスとフォルクマンが提唱した心理学的ストレスモデルについて解説しました。第9回目は、心理学的ストレスモデルの中にも出てきたストレスへの対処法(ストレス・コーピング)についてお話ししていきたいと思います

ストレス・コーピングには、不安・イライラなどの精神症状や、動悸・首や肩のこりなどの身体症状であるストレス反応を軽減する作用があるんだったね。自分自身をストレッサーやストレス反応から守るために、無意識のうちにストレス・コーピングを使っていることも多いよ。

ストレス・コーピングの定義

1984年、アメリカの心理学者ラザルス(Lazarus, R. S.)とフォルクマン(Folkman, S)が心理学的ストレスモデルを提唱しました。その中で、ストレスコーピングを以下のように定義しています。

ストレス・コーピングとは、重荷に感じ、自己の能力を超えていると感じる環境または自己の内界に起きる問題に対して、絶えず行なわれている精神的・行動的な努力のことである。

言い換えると、ストレス・コーピングとは、ストレスを感じる状況に遭遇して不安や怒りを感じたときに、自分を落ち着かせるためにしていることや、解決するためにしている行動を指します。

また、ふとしたときに頭の中でマイナスの考えがぐるぐると巡ることもありますよね。そのようなときに、「大丈夫!」と自分を励ましたり気分転換になることをしてマイナス思考から離れたり、友達だったらどのように考えるか視点を変えてみることも、ストレス・コーピングになります。

おそらく多くの人は、経験を通して自然と自分なりのストレス・コーピングを身につけているのではないかと思います。家族や学校で、ストレス・コーピングについて学んだり、話し合ったりする機会は少ないように感じています。このブログをとおして、自分自身のストレス・コーピングを一緒に検討していきましょう

ストレス・コーピングには、さまざまな種類があるよ。まずは、今自分が使っているストレス・コーピングを振り返ってみよう!

ワーク

あなたはストレッサーに直面したり、頭の中でマイナスの考えがぐるぐると巡るとき、どのようなストレス対処法を用いていますか?

まずは5個、書き出してみましょう。それ以上思いたら、10個を目安に書いてみてください。

ワークの振り返りは、後で行いたいと思います。

ストレス・コーピングの種類

普段、自分が使っているストレス・コーピングは一つではなく、いくつかあったのではないかと思います。実際、ストレス・コーピングは人の数ほどあると言っても過言ではありません。そこで、ストレス・コーピングをいくつかのカテゴリーに分類しようという動きが活発化しました。現在もこのような研究は続いていて、時代とともに新しいカテゴリーが作られています。例えば、ストレスフルな出来事があったときにSNSでつぶやくというストレス・コーピングは、30年前には存在していませんでしたね。

さて、今回はストレス・コーピングの分類として以下の3つをお伝えしていきます。

①課題優先対処

ストレスフルな状況を解決のために分析し、その状況を変化させるための行動を実行する対処法です。

例)ストレスフルな状況を詳しく調べる、解決方法を考える、優先順位をつける、専門家に相談する

ストレッサーに直接働きかけるため、上手くいくとストレッサー自体が小さくなったり、消失することがあります。そのため、不安や落ち込みなどのストレス反応を緩和する作用があることが研究で明らかになっています。

また、課題優先対処をよく用いている人は、同じ出来事を経験してもストレスフルと感じにくいと言われています。そのため、精神的な健康を維持しやすい状態にあります。

ただし、後に説明する②情緒優先対処と、③回避優先対処をあまり用いず、課題優先対処のみを高頻度で使っている場合には注意が必要です。特に、完璧主義の傾向がある、自分のことは自分で何とかすべきだという考えが強い、人に頼ることに抵抗がある、という方。

ストレス・コーピングが上手く機能しなかったときに、その理由を自分の能力のせいにする傾向があると言われています。そして、それが過度になると自分を責め続けたり、気分が落ち込むことにもつながり、精神的な健康を崩す可能性を秘めています

一見すると、課題優先対は問題に直接対処していく素晴らしいストレス・コーピングですが、何事もバランスが大事ということですね。

②情緒優先対処

ストレスフルな出来事に対して、自分に非があると考え落ち込んだり、相手に対して怒る対処法です。ストレッサーを解決するための直接的な働きかけは行っておらず、感情面での反応体の症状としての訴えを含みます。

例)不安になる、緊張する、自分を責める、腹を立てる

ストレスフルな状況に直面したとき、その衝撃が大きければ大きいほど、平常心を保つことは困難になり、それが自然な反応でもあります。情緒優先対処は、自分が何に怒っているのか、ショックを受けているのか、まだ言葉でハッキリと説明することができないときに現れやすいです。

建設的な対処法ではないように感じる人もいるかもしれませんが、ストレスフルな状況に直面したときに感情や身体反応を抑え込まずに出すことは、それだけでストレス反応の軽減につながります。泣きたいときには泣く、ショックなことがあれば動揺してこころが乱れる。子どもでは、このような反応がストレートに表現されやすいですね。

ただ、情緒優先対処を高頻度で用いる場合は注意が必要です。一人で嫌なことや困っていることに考えをめぐらしたり、他人を批判したい気持ちが強くなりやすいです。そのため不安やイライラが強くなったり、落ち込みやすくなり、心身の健康を維持することが難しくなることがあります

ある程度、自分の感情や体の反応を抑制せず表出することは大切ですが、やはりバランスが重要になってきます。最初は難しいかもしれませんが、課題優先対処や回避優先対処も意識的に取り入れてみてくださいね

③回避優先対処

ストレッサーと距離を取って、何か他のことをしたり、違った捉え方することで気を紛らわす対処法です。

例)良かった頃のことを考える、買い物をする、友達と話す、好きなことをする

情緒優先対処と同様に、ストレッサーを解決するための直接的な働きかけは行っていませんが、解決が困難なストレッサーの場合には役立つことがあります。

回避優先対処は、一時的に不快な感情が緩和するため、短期的なストレッサーには効果的とされています。

例)満員電車の中で足を踏まれたが、相手が特定できない場合、好きなお菓子を買って食べて気晴らしをする。

一方、長期的なストレッサーに対して回避優先対処を使い続けると、根本的な問題解決が遅れることで、結果的にストレス反応が強くなりやすいとされています。

例)職場の上司が高圧的で怖い。よく怒られて落ち込む。帰宅するとそのことを忘れるために深夜までゲームし続けて、連日寝不足。集中力が低下して、仕事でミスをして上司に怒られるという悪循環。

回避優先対処は、状況に合わせて使っていきたいストレス・コーピングになります。

ワークの振り返り

普段自分が使っているストレス・コーピングは何個ありましたか?それらを①課題優先対処、②情緒優先対処、③回避優先対処の3つのカテゴリーに分類してみましょう。どこかのカテゴリーが多い・少ないというアンバランスさがあった場合は、他のカテゴリーの対処法を意識して行ってみてくださいね

ワンポイント解説💡

ストレス・コーピングにはさまざまなものがあり、カテゴリー分類もされています。では、どのようなストレス・コーピングがもっとも効果があるのでしょうか。初期の研究では、まさに効果的なストレス・コーピングを探すことがテーマとなっていました。そして、上記でお話ししたように、一定の見解も見出されました。

その後も、ストレス・コーピングの研究は続きました。近年では、ストレス反応の予防には効果的な単一のストレス・コーピングではなく、選択できるレパートリーが豊富にあることが大事ということが明らかとなりました。つまり、ストレスフルな状況ごとに、自分が持っているレパートリーの中から柔軟にストレス・コーピングを選択できることが重要ということです。「AかBか」ではなく、「AもBも」という考え方へのシフトでした。

課題優先対処が効果的なこともあれば、情緒優先対処や回避優先対処が効果的なこともあるということですね。場合によっては、3つを時間差で用いることもありそうです。あなたの手の中には、どのようなストレス・コーピングのカードがありますか。TPOに合わせてカードを選択できるようになるには、手持ちのカードを増やすことが必要になります。

カウンセラー
やまもと

第9回目は、ストレス・コーピングについてお話ししました。自分のストレス・コーピングの特徴を知りたい、自分に合ったストレス・コーピングを探してみたい、何かアドバイスがほしい、という場合は、カウンセリングを体験してみませんか予約ページの「心理検査」のカテゴリーの「ストレス・コーピング」で承っています。カウンセリングでは、ストレス・コーピングに関する質問紙(心理テスト)も行います

第10回目は、引き続き「ストレス・コーピング」をテーマに、その科学的な効果についてお話しする予定です

今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。ブログの内容に関する質問・感想、取り扱ってほしいテーマなどは、お問い合わせフォームよりお願いしますにゃ!

参考文献

中野敬子(2005)『ストレス・マネジメント入門 自己診断と対処法を学ぶ』 金剛出版

おまけ:ねこにもストレス反応を和らげる動作があります。例えば、ジャンプが失敗して目的地にたどり着けなかったとき、ねこは動揺や恥ずかしさを収めるために毛づくろいをすることがあります。いたずらをして怒られたときも、同じような反応が起こったりしますね。

毛づくろいをしながら、こころを落ち着けている間は、そっと見守ってね。